第19回「山口むしの会」総会報告

日時 :2020年2月22日(土)13:00 〜 23日 (日)9時

場所 : 国立山口徳地少年自然の家

 今年は、講演をお願いした秋吉台科学研究所の方、博多昆虫同好会の会長さんおよび県外会員2名を含め、総会には29名、夜の部には22名が参加しました。
講演・研究発表では、秋吉台科学博物館の荒木陽子氏が、「秋吉台の草原 〜人と自然のいとなみがつくりあげた生態系〜 」と題して講演されました。
内容は、草原を放置すれば森林に変わっていくため、草原を維持するには山焼きや草刈りで樹木の芽生えを取り除くことが必要であること、山焼きの灰は草の肥料にもなり、山焼きで明るくなった地面には草がよく芽吹くため、きれいな草原を維持するためには山焼きが必要であること、草原の火入れは焼畑のような森を焼く場合とは違い、地面近くの温度はほとんど上がらず、草の新芽や根、土の中の微生物、石灰岩の下や隙間に隠れた虫たちのほとんどが焼け死ぬことがなく、ウサギやキツネなどの大きな動物も周囲の山林に逃げ込んでいて無事なこと、秋吉台の草原は上記の理由により、太古からの人間による山焼きによって存続されてきたことなどを解りやすく説明され、とても興味深く聴講しました。
次に、後藤会長が「山口県のオオヒカゲの分布と生態について」と題して発表され、県内では錦町(現岩国市)と県北部の十種ヶ峰で記録があったオオヒカゲについて、2014年に県北部の新たな場所から確認された後、2019年までに確認できた県北部での新分布地や生態調査で確認できたことを詳しく解説されました。また、ススキを食草としていると思われる地域があり、ススキがどこにでも自生する植物であるため、今後の分布調査には非常に困難を伴うことを危惧されていました。

 功績者表彰の奨励賞は対象者なしで、敢闘賞は2015年から主にカメムシ目の調査で活躍し2019年には山口県初記録種を2種採集するなど貴重な記録を集積された小川鷹介さんと、2019年に新入会された高校生で、新人離れした知識と採集術を駆使して山口県初記録種のコウチュウ目6種を採集するなど貴重な記録を集積された田村竜土さんが表彰されました。
努力賞は2018年と2019年に夏休みの自由研究とでタガメの生態観察を行い、2019年には防府市ソラールでの作品展で特賞を受賞し、防府市の代表として山口県科学研究発表会で発表するなどの功績を残された河野悠希さんが表彰されました。

 2020年度活動計画(案)および2020年度予算計画(案)については、各計画立案担当者から説明が有りましたが、出席者全員一致で承認されました。

 夕食後,休憩を挟んで19時15分から夜間の部を昼間参加できなかった方も含めリーダー棟2で開催しました.挨拶の後,兵庫県から参加された有田 斉氏による島根県隠岐島と題して,渓谷のルーミスシジミとキリシマミドリシジミの生態観察報告がなされました.
かなり荒れた生息環境の中で,両種共に生態写真で紹介されましたが,盛夏で大変な苦労があったことが判りました.
続けて周防大島町の山本弘三氏による,毒草イケマを食べて育つアサギマダラはそのまま毒蝶になれるのか,という研究報告がなされました.
イケマを確保することは県内では大変なことで,食草を取り寄せることから始まり,かなり根気のいる研究だと感じ入りました.両氏とも目的をもって活動しておられることに敬意を表したいと思います。
その後各人による自己紹介と今後の目標などについて一人一講話を続け,予定の時間になり夜間の部を終えることにしました.
後は自由時間とし宿舎周りでフユシャク蛾の観察をされる方,会話を続ける方などひと時の楽しい交流を図りました.

 明けて23日は朝の集いに参加し,朝食後,宿所の片づけと清掃を済ませ9時前に解散することになりました.
それから周辺を探索する方などもありましたが,何事もなく無事総会を終えることができました.
いろいろとご協力いただいた関係各位にお礼申しあげます.


総会スナップ写真

青少年自然の家

参加者

会場の様子

会長挨拶

後藤氏「山口県のオオヒカゲの分布と生態について」

受付

総合司会 川元氏

講演 荒木氏「秋吉台の草原」

コウチュウ目の動向 椋木氏

ハチ目の動向 中村氏

カメムシ目の動向 伊ヶア氏
 ガ類の動向 吉原氏
チョウ類の動向 後藤氏

直翅類の動向 福田氏

トンボ目の動向 伴氏

その他昆虫の動向 五味氏

会計報告 河原氏

会計監査 管氏

功績者表彰敢闘賞 小川氏

功労者表彰敢闘賞 田村氏

新入会員 一色氏

新入会員 植田氏

 新入会員 田村氏

博多昆虫同好会会長 佐々木氏
 講演 有田氏

. 講演 山本氏

夜間講習会

横山氏

 岡村氏

山本氏

重中氏

有近氏

田上氏

夜間講習会風景
 朝の集いで本会を紹介する伴氏

朝の集い

朝の集い

朝食風景

朝食風景